トルコのように肉料理中心の食文化や、揚げ物・バター・油脂の多い食事を続けていると、体重が増えていなくてもコレステロール値や中性脂肪値が高くなる人は少なくありません。
これは日本でも同じで、「やせているのに脂質異常症」と悩む人が増えています。
脂質異常症の改善には食事改善・運動・必要に応じた薬物療法がありますが、最初に取り組むべきは 日々の食生活の見直しです。
ここでは、特定保健指導経験がある保健師の視点から、
なぜ脂質異常症が良くないのか?
どんな食品を控え、何を摂ればいいのか?
を、わかりやすくまとめます。
この記事を読むことで、次の健康診断で数値改善を狙える具体的な行動がわかります。
脂質異常症はなぜ危険なのか?
脂質異常症とは、
・LDL(悪玉)コレステロールが高い
・中性脂肪が高い
・HDL(善玉)コレステロールが低い
このいずれかの状態です。
動脈硬化を進め、重大疾患につながる
脂質が高い状態が続くと、血管壁に脂肪が溜まり、動脈硬化が急速に進行します。
その結果、以下のような病気のリスクが急上昇します。
・心筋梗塞
・脳梗塞
・狭心症
・大動脈瘤
・末梢動脈疾患(足の血流障害)
特にLDLコレステロールは血管を傷つける主犯で、中性脂肪は血糖・肥満・肝臓への悪影響も引き起こします。
“痩せていても数値が悪い”は珍しくない
以下の人は体型に関係なく脂質異常が起こりやすいです。
・肉・揚げ物・バター・チーズをよく食べる
・アルコールをよく飲む
・運動量が少ない
・内臓脂肪がつきやすい体質
・遺伝的にコレステロールが高くなりやすい
特に遺伝性の「家族性高コレステロール血症」は、普通の努力では数値が下がりにくい点にも注意が必要です。
【実践的】脂質異常症の食事療法|摂取を控える食品・増やす食品リスト
脂質異常症の食事療法の原則はシンプルです。
① コレステロールを上げる食品を控える
② 良い油(不飽和脂肪酸)を増やす
③ 総カロリーを適正にする
④ 食物繊維をしっかり摂る
目的別に整理して解説します。
LDLコレステロールを下げたい人
① 食品自体からコレステロール摂取を控えることと、
②「悪い脂質」(飽和脂肪酸・トランス脂肪酸)は肝臓でコレステロール合成を促進するので、これらの摂取を控えることがポイントです。特にトランス脂肪酸は血管への悪影響が大きいです。
コレステロールが多い食品を控える
目標:1日200mg未満
・卵黄
・動物の内臓(レバー、モツ、ホルモン、ハツ、砂肝)
・いくら、筋子、たらこ、明太子などの魚卵
・ししゃも、小魚
・うなぎ
量を「ゼロ」にする必要はありません。
重要なのは 頻度を減らすこと。
飽和脂肪酸が多い食品を控える
・豚バラ肉、牛バラ肉、鶏皮
・ソーセージ、ベーコン、サラミ、ハムなど加工肉
・バター、ラード
・生クリーム、アイスクリーム
・チーズ(特にハードタイプ)
トランス脂肪酸が多い食品を控える
・マーガリン
・ショートニング
・インスタント麺
・ドーナツ、菓子パン
・スナック菓子(ポテトチップス)
・古い揚げ油
食物繊維の多い食品を摂る
食物繊維は、腸でコレステロールを吸着し排出を促します。
目標:1日350gの野菜+海藻やきのこなど
・野菜や根菜(キャベツ、ブロッコリー、ほうれん草、ゴボウ、モロヘイヤなど)
・海藻(わかめ、ひじき、昆布)
・こんにゃく
・雑穀、玄米
・オートミール
・きのこ類(しいたけ、えのき、まいたけ)
・大豆製品(豆腐、納豆、豆乳、油揚げ、おから、高野豆腐)
中性脂肪を下げたい人
中性脂肪は「余ったエネルギー」が変換されたもの。カロリー過多が最大の原因です。食品の“量”に気をつけましょう。
中性脂肪は“糖+脂肪+アルコール”で急上昇し、夜に上がりやすいため、夜の炭水化物・アルコールは特に注意。
主食を食べ過ぎない
・白米、パン、パスタ、ラーメンの大盛り
・砂糖入りのグラノーラ
揚げ物を控える
・フライドチキン
・フライドポテト
・揚げパン
アルコールは飲みすぎない
アルコールは中性脂肪を急上昇させます。
・ビール
・日本酒
・ワイン
・ウイスキー
・焼酎
割り物が甘いとさらに良くない。どれも飲む量が増えるほど悪影響が強いです。
糖質の多い飲み物は控える
・ジュース、コーラ
・缶コーヒー
・エナジードリンク
・砂糖が多いスポーツドリンク
甘いお菓子を控える
・ケーキ
・ドーナツ
・クッキー
・チョコ
・アイスクリーム
・菓子パン
果物を摂りすぎない
果物の果糖は中性脂肪に変わりやすいので食べ過ぎに注意。
n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA)を多く含む食品を摂る
中性脂肪を下げる食品は積極的に摂りましょう。これが最強の“中性脂肪対策”です。
EPA・DHAを多く含む食品
・いわし
・さば
・さんま
・あじ
・ぶり
・まぐろ
・さけ
・にしん などの青魚
植物油(少量ずつ)
・えごま油
・アマニ油
・クルミ
・アーモンド
青魚は 週2~3回が理想。これらは血液をサラサラにし、動脈硬化予防にも優れています。
食習慣全体で意識したいポイント
調理方法を工夫する
油を使う量を減らすと改善が加速します。
・揚げる → 焼く・蒸す・煮る
・バター → オリーブオイル少量
・皮付き肉 → 皮を除く
外食のときは“汁物を残す”
汁物には油と塩分が溶け込んでいます。
ラーメン・スープカレーなどは特に要注意。
夜遅い食事を避ける
22時以降の食事は中性脂肪が上がりやすい。
数値はどれくらいで改善するのか?
・食事+運動を並行すれば、早い人は1か月で変化が出ます。
・ただし油断するとすぐ戻ります(特に中性脂肪)。
・更年期やホルモン変化でも数値は上がりやすくなります。
・遺伝体質の場合は、薬物療法(スタチン等)と併用が必要なこともあります。
無理しないためのコツ|継続が最重要
食事療法は「一時的な修行」ではなく一生付き合う生活習慣です。
・完全に我慢すると続かない
・たまにチートデイを作る
・外食続きの日は翌日で調整する
・“できる範囲で継続”が最大の成功ポイント
大病を避けるためにも、自分の体と相談しながら続けることが最も大切です。
これなら私もできるかも!ということを上手に探して、食習慣を整えていきましょう。


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